1.営業保証金制度の目的

⑴ 宅地建物取引業者に営業保証金を供託させることにより、その業務の適正な運営を図るとともに、宅地建物取引業者の信用を増大させること。

⑵ 依頼者が宅地建物取引業者との取引で万一損害を受けても営業保証金から弁済させることとし、依頼者に安心感を与えること。

2.営業保証金の供託

              
⑴ 営業保証金の供託の意義…宅地建物取引業者(宅地建物取引業保証協会の社員で営業保証金の供託を免除された者を除く)が宅地建物取引業を行うにつき、依頼者等に損害を与えないということを保証するため、国の機関である供託所に一定の金額を保管させておくこと。

⑵ 供託事由…次の(イ)~(ホ)のいずれかの場合である(免許権者に届出必要

(イ)新たに宅地建物取引業を営もうとするとき
(ロ)事務所を増設したとき(増設した分だけ)
(ハ)営業保証金につき還付が行われたとき(還付による不足分だけ)(同法28条1項)。
(ニ)有価証券又は有価証券と金銭で供託している場合においてその主たる事務所を移転したことによりもよりの供託所が変更したとき
(ホ)有価証券で供託している場合において、営業保証金の変換をしようとするとき

重要度A

1.営業保証金は、宅建業者が、主たる事務所のもよりの供託所に供託する。(各事務所ごとに個々に供託するのではない点に注意)
2.営業保証金の額は、主たる事務所につき1,000万円その他の事務所につき事務所ごとに500万円の割合による合計額である。
3.営業保証金は、金銭のみならず、国債証券・地方債証券・その他国土交通省で定める有価証券で供託することができる。
4.有価証券の評価額
① 国債証券 額面金額の100%
② 地方債証券・政府保証債券 額面金額の 90%
③ その他の有価証券 額面金額の 80%
5.供託方法には金銭のみ、有価証券のみ、金銭と有価証券の組合せ3種がある。
6.国債証券・地方債証券のほか、国土交通省令で定める鉄道債権・電信電話債権等の一定の有価証券が供託物として認められている。
7.小切手、手形、株券による供託は認められていない

★注1.供託後は供託書の写しを添付して、供託した旨を免許権者に届け出る必要がある。

★注2.宅地建物取引業者は届出をした後でなければ、その事業を開始してはならない

★注3.事務所を増設した場合においても同様である。

★注4.営業保証金の届出については、すべて免許権者(国土交通大臣、都道府県知事)に直接届出することとされている。

(3) 事務所を新設した場合の措置(26条)
重要度A

事業開始後、事務所の新設があった場合には、新たな事務所ごとに政令で定める額の営業保証金を主たる事務所のもよりの供託所に供託し、その旨を免許権者に届け出た後でなければ、新設事務所で事業を開始することができない(法26条)。

増設事務所の営業保証金の供託については、「2週間以内に供託しなければならない」などと期限は切っていない。保証協会とは違う点に注意。

(4) 営業保証金の供託と事業の開始(25条)
重要度A

宅地建物取引業者は、営業保証金の供託をしたときは、供託物の受け入れの記載のある供託書の写しを添付して、その旨を免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事に届け出なければならない(同法25条4項)。

したがって、宅建業者は、その届出をした後にはじめて、物件について契約を締結したり広告を出したりすることができるのである。

これに違反すると、業者は監督処分として業務停止処分の対象となり、罰則として6月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金または両者が併科される(81条)。

(5) 供託をしない場合の措置 
重要度A】           

国土交通大臣又は都道府県知事は、その免許した宅地建物取引業者が免許をした日から3月以内に供託した旨の届出をしないときは、届出をすべき旨の催告をしなければならず(同法25条6項)、その催告が到達した日から1月以内に届出がないときは、国土交通大臣又は都道府県知事は、その宅地建物取引業者の免許を取り消すことができる(同法25条7項)。

※1.催告は必ずしなけばならないが免許取消は、することができるにすぎない点に注意。
※2.実際に供託していても、届出がない場合は免許取消しすることができる。
※3.免許取消しについては聴聞不要である。