抵当権の優先弁済の順序

抵当権相互間の順位……登記の前後による(民373Ⅰ)

抵当権の順位の変更は各抵当権者の合意によりできる、但し利害関係を有する者あるときはその承諾を得てできる(民373Ⅱ)。
順位の変更は登記が効力発生要件である(民373Ⅲ)。
 利害関係人……転抵当権者、差押債権者などであって、債務者や抵当権設定者及び物上保証人の承諾は不要である

抵当権と他の優先弁済権間の順位

① 質権と抵当権……登記の前後による(民361・373)。
② 先取特権と抵当権
不動産の先取特権……登記の前後によらず、不動産保存の先取特権・不動産工事の先取特権が優先(民339)。
※ 不動産の売買の先取特権は登記の前後による。
③ 不動産賃借権抵当権……登記の前後による。
※1.すでに賃借権の登記(建物の場合は引渡し)ある不動産に抵当権の登記がなされても、賃借人は抵当権者及び競落人に賃借権を対抗できる。
※2.逆に、抵当権の登記ある不動産に賃借権の登記がなされた場合、短期賃貸借の期間を超える賃貸借は保護されず、短期賃貸借(山林10年、土地5年、建物3年以内の賃貸借)は、保護されていたが、平成16年4月1日以降の新たな賃貸借からは、法改正により保護規定が廃止された
したがって、抵当権の登記より後の賃借権は期間の長短にかかわらず、抵当権者及び競落人に対抗することができない。ただし、例外として、すべての抵当権者が同意をし、その同意について登記がされたときは、その抵当権者及び競落人に対抗することができる。そして、抵当権者に対抗することができない賃借権により建物を使用収益している者で、正当な使用収益権を有していた者は、競落人が所有権を取得したときから6カ月以内に建物を明け渡さなければならない(395条1項)。尚、競落人は前賃貸人の敷金返還債務を承継しない。
※ 短期賃貸借制度の改正法の施行日は平成16年4月1日であるが、施行日以前に契約したものは短期賃貸借の保護は従前どおりである。