宅建業者は重要な財産である不動産を取り扱うわけですから、宅建業者としてふさわしくない者には「免許を与えることはできません」、これが免許の基準(欠格要件)です。

この分野からは毎年のように出題されていますので、必ず押さえましょう!
重要度A
 

(1) 宅地建物取引業法で定められている免許の基準は次のとおりであり、この免許の基準に該当する者は、免許を受けることができない(①~⑬)。

 

● 免許申請者自身が判断能力が不十分だったり、財産を管理する能力がない場合です。

① 成年被後見人、若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ない者

※ 未成年者は含まれないことに注意! 成年被後見人、被保佐人が、審判の取消しを受けた場合及び破産者が復権を得た場合は、直ちに免許が受けられる。

 

● 法律に違反したり、犯罪を犯して刑罰を受けた場合です。

② どんな罪等であっても、禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、または刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者

 

※1.刑の種類は死刑・懲役・禁錮・罰金・拘留・科料であり、刑の軽重もこの順序が原則。

※2.刑の執行猶予の言渡しを受けた後、その言渡しの取消しを受けることなく猶予期間が満了した者、または大赦・特赦を受けた者は、刑の言渡しが効力を失うのであるから、刑の執行を受けることがなくなった場合に該当せず、直ちに免許を受けることができる(恩赦には大赦・特赦・減刑・刑の執行の免除・復権の5種類がある)。

※3.刑の執行の免除、刑の時効の完成は、「刑の執行を受けることがなくなった」場合に該当するので5年を要する。

※4.第1審または第2審で刑の言渡しを受けても控訴または上告をして裁判が係属している者は、刑が確定していないので、刑に処せられた場合に該当せず、免許は受けられる。

 

③ 宅建業法暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に違反し、または傷害罪、傷害現場助勢罪、暴行罪、凶器準備集合罪、脅迫罪背任罪、もしくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯し、罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者

※ ここで注意してほしいことは、たとえば、国土法違反・詐欺罪・業務妨害の罪・公職選挙法違反・過失傷害罪等で罰金刑に処せられた者でも免許は受けられる。

 

④ 免許申請前5年以内宅建業に関し不正または著しく不当な行為をした者
※ 無免許事業を繰りかえし行っている者等はこれにあたる。

 

⑤ 宅建業に関し不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者
※ 暴力団の構成員である場合などがこれにあたる。

 

● 宅建業法上、極めて悪いことをして、免許を取り消された場合です。

⑥ ⑴ 宅地建物取引業法66条8号・9号(①不正の手段で免許を受けたとき、②業務停止の事由に該当し情状が特に重いとき、③業務停止の処分に違反したとき)に該当することにより免許を取消され、その取消しの日から5年を経過しない者

⑵ ⑴において、免許を取り消された者が法人である場合、当該取消に係る聴聞の期日及び場所の公示の日前60日以内に、その法人の役員であった者でその取消の日から5年を経過しない者

 

※ 以前宅建業界関係者であった者は、一定の理由により免許を取り消された場合、5年間はカムバックできない、という規定である。

66条8号とは不正手段によって免許を取得した場合、9号は業務停止処分対象行為で情状が特に重い場合、または業務停止処分に違反した場合をいう。

法人の役員は法人の行為につき責任を負うべき立場にあるので、個人としても免許を受けられないことにしたのである。

また、「役員」とは、要するに法人に対して支配力を有する者も含まれます。いかなる名称を有するかは関係ない。

代表取締役はもちろん、取締役、執行役又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有すると認められる者も含まれる。

また、監査役は、免許申請書に記載される役員には含まれますが、もともと業務等の監査権限をもっているだけで、業務の執行権限はもっていませんから、免許の基準でいう役員には含まれません。

 

※ ここで注意してほしいことは、いずれも66条8号又は9号以外の免許取消し事由、例えば免許換えをすべき場合に該当しながら新たに免許を受けていないとき(66条5号)、免許を受けてから1年以内に事業を開始せず、又は引き続いて1年以上事業を休止したとき(66条6号)、廃業等の届出がなくて、廃業等の事実が判明したとき(66条7号)などの場合で、免許が取消されても、免許の基準に該当しない。

 

⑦ ⑴の66条8・9号のいずれかに該当するとして、免許の取消処分の聴聞の期日及び場所の公示された日から、取消処分をする日又は取消処分をしないことを決定する日までの間に、相当の理由なく廃業の届出をした者でその届出の日から5年を経過しない者

 

⑧ ⑦の期間内に、相当の理由なく、合併により消滅した法人又は解散・廃業の届出があった法人の、免許取消の聴聞の期日及び場所の公示の日前60日以内にその法人の役員であった者で、その消滅又は届出の日から5年を経過しない者

※ ⑦⑧は、免許取消し処分を免れるための意図的な廃業等のケース。

 

● 未成年者の法定代理人や法人の役員等に欠格要件がある場合です。

⑨ 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者で、その法定代理人が上記の①~⑧のいずれかに該当する場合

未成年者の場合は、実際の取引において、法定代理人の同意を得て自ら行うか、法定代理人が代理して行うことになる(民法4条、824条等)。

したがって、未成年者本人には問題がなくても法定代理人が宅建業者として不適当な人物だったらまずいわけである。

 

※1.営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者であっても、法定代理人(親権者または後見人)が上記の欠格要件に該当しなければ免許は受けられる。

※2.営業に関し成年者と同一の行為能力を有する未成年者(法定代理人から営業の許可を受けた未成年者)の場合は法律上、成年者と同一の取扱いをするのであるから、法定代理人の欠格要件には関係なく、未成年者本人が単独審査される(婚姻した未成年者の場合は成年者とみなされているので同様である)。

 

⑩ 法人で、その役員または政令で定める使用人が、上記の①~⑧のいずれかに該当する者がいる場合

※ 政令で定める使用人とは、宅地建物取引業者の使用人で事務所の代表者のことである(支店長等)。

 

⑪ 個人で、政令で定める使用人のうちに、上記の①~⑧のいずれかに該当する者がいる場合

 

● 申請手続き上の問題
⑫ 事務所ごとに法定数の成年者である専任の取引士を置いていない者
⑬ 免許申請書の重要な事項について虚偽の記載があり、もしくは重要な事実の記載が欠けている場合