3.不動産の鑑定評価によって求める価格

とことん覚える!重要度B

(1) 正常価格
 不動産の鑑定基準によって求める価格は、原則として「正常価格」である。正常価格とは、市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価格を表示する適正な価格をいう。つまり、市場統制等がない公開の場で、需要者および供給者が売り急ぎ、買い進み等の動機によらないで行動する普通の価格のことです。
(2) 限定価格
 限定価格とは、市場性を有する不動産について、不動産と取得する他の不動産との併合または不動産の一部を取得する際の分割等に基づき合理的な市場で形成されるであろう市場価値と乖離(かいり)することにより、市場が相対的に限定される場合における取得部分の当該市場限定に基づく市場価格を適正に表示する価格をいう。
※ これは、隣接する土地を買うとか、借地権と底地の併合を目的とする売買の場合のように、どうしてもその場所でないといけないような状態のときに、当事者間にだけ通用する価格のことです。
(3) 特定価格
 特定価格とは、市場性を有する不動産について、法令等による社会的要請を背景とする評価目的の下で、正常価格の前提となる諸条件を満たさないことにより正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することとなる場合における不動産の経済価値を適正に表示する価格をいう。たとえば、資産の流動化に関する法律に基づく評価目的の下で、投資家に示すための投資採算価値を表す価格や、会社更生法や民事再生法に基づき事業の継続のため資産を評価したり早期売却をする時などの価格のこと。
(4) 特殊価格
 特殊価格とは、文化財等の一般的に市場性を有しない不動産について、その利用現況等を前提とした不動産の経済価値を適正に表示する価格のこと。たとえば、文化財の指定を受けた建造物等についてその保存に主眼をおいて求める価格のこと。

(5) 最有効使用の原則
 不動産の価格は、その不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用を前提として把握される。つまり、不動産の価格は、その不動産が最もうまく利用されている時の価値で決まるということである。

4 地域分析及び個別分析

不動産の鑑定評価にあたっては、まずは対象不動産に係る価格形成要因の作用を把握し、分析することにより、対象不動産の最有効使用を判定した上で、価格を求めることとなる。これを地域分析及び個別分析という。

1 地域分析

地域分析にあたって特に重要な地域は、用途的観点から区分される用途的地域、すなわち近隣地域及びその類似地域と、近隣地域及びこれと相関関係にある類似地域を含む、より広域的な範囲、すなわち同一(どういつ)需給圏(じゅきゅうけん)である。

①近隣地域とは、対象不動産の属する用途的地域であって、より大きな規模と内容とを持つ地域である都市あるいは農村等の内部にあって、居住、商業活動、工業生産活動等、人の生活と活動とに関して、ある特定の用途に供されることを中心として地域的にまとまりを示している地域をいう。
②類似地域とは、近隣地域の地域の特性と類似する特性を有する地域である。
③同一需給圏とは、一般に対象不動産と代替関係が成立して、その価格の形成について相互に影響を及ぼすような関係にある他の不動産の存する圏域をいう。また、近隣地域の外、かつ、同一需給圏内の類似地域の外に存する不動産であっても、同一需給圏内に存し、対象不動産とその用途・規模・品等などの類似性に基づいて、これら相互の間に代替、競争等の関係が成立する場合がある。

2 個別分析

個別分析では、対象不動産の個別的要因を分析してその最有効使用を判定するが、個々の不動産の最有効使用は、一般に近隣地域の地域の特性の制約下にあるので、個別分析にあたっては、特に近隣地域に存する不動産の標準的使用との相互関係を明らかにし、判定することが必要である。
なお、対象不動産の位置・規模・環境等によっては標準的使用の用途と異なる用途の可能性が考えられるので、このような場合(例えば、標準的使用が戸建住宅の敷地である地域内にある大規模な画地で、マンション敷地としての利用が最有効使用と判定されるような場合)には、それぞれの用途に対応した個別的要因の分析を行って最有効使用を判定すべきである。